中国の不動産バブル崩壊!(3)新築住宅にも波及し始めた価格下落

中国の不動産セクターが危機を迎えていることは、毎日のように報道されている。では、一般の人たちにはどのくらいの衝撃があったのだろうか。中国恒大集団の債権利子払いを受けられなかった人たちが騒ぐ事件はあったが、損害の露呈が本格的になるのはこれからだろう。しかし、すでに公式統計を用いた分析でも、その広がりと数値は分かってきた。

フィナンシャル・タイムズ紙10月20日付が、中国の国家統計局のデータを使って分析した結果によると、「新築住宅の価格は、8月から9月にかけて、70都市の半分以上で下落していることが分かった。下落は2015年4月以来初めてのことである。それは中国全土で続いている不動産業の低迷が、いよいよ住宅市場に波及したことを示している」。

同紙が作成した図版を見れば、新築住宅の価格が下落を始めた都市(桃色)は全国に広がっており、あいかわらず上昇している都市(群青)や、ほぼ同じである都市(空色)もまだあるが、これまでの不動産バブルが崩壊したときと同じように、ある時点まではゆっくりだが、その後は急速に下落が波及していくのではないかと思われる。

桃色のドットが住宅価格が下落した都市、空色が横ばいの都市、群青が上昇の都市

昨年と比べたとき、新築住宅は価格こそ3.8%の上昇を示しているが、ブルームバーグが公式データを分析した結果によると、住宅売買の件数は昨年より8月は20%減少し、9月は17%減少している。今年第3四半期の中国不動産セクターは、売上が前年度比で1.6%減にとどまっているが、第3四半期のGDPが前年比で4.9%と、前期の7.9%から大きく減少していることを考えれば、大きな下落を迎えるのは時間の問題であろう。

しかも、GDPなどの指標ならば、他のデータから推測できるが、地域からの報告に基づいた中国政府の発表であることを考えると、ある程度の「誤差」があると考えたほうがよい。たとえば野村ホールディングズのチーフエコノミストであるティン・リューはフィナンシャル・タイムズの取材に「住宅価格のデータについては、中国全土においてあまねく、価格コントロールによるディストーション(ゆがみ)があるかもしれない」と微妙な言葉を使って答えている。

こうした中国の不動産セクターの激動といってよい変化は、いうまでもなく習近平主席が打ち出した「共同富裕」に象徴される、イデオロギー的な政策が近因といってよい。たしかに、不動産バブルは国民が住宅を買うのを困難にしてしまった。しかし、不動産バブルを是正するのはよいが、その方法が間違っていれば破壊的なものになってしまうだろう。ウォールストリート紙10月19日付は、「不動産バブルと戦うなかで、習近平は不動産税への反対に直面している」を掲載し、中国国内でもすでに多くの反発が生まれている事情をリポートしている。

このリポートのなかで、そもそも習近平が不動産税の導入をいいだした理由が紹介されているが、これが信じられないようなものなのである。不動産税をかけるようにすれば、高騰していた不動産の価格が下がって、不動産バブルによる価格上場を押さえることで、中間層の生活が楽になるというのである。

これはもちろん、不動産市場というものの性格がよくわかっていない政策というしかない。急激に不動産税をかけると不動産がさっぱり売れなくなり、それまで急成長していた不動産価格が急落してしまう。そうすると、すでに不動産を購入していた人たちの資産価値が下がってしまい、消費を急激に抑えるようになり、よくて景気は後退、わるければ急激な不況がやってきてしまい、不動産市場は閑古鳥が鳴くことになる。

「中国では都市住民の90%が住宅を保有しており、不動産関連産業はGDPのおよそ3分の1を占めている。さらに、家計の資産のうち最大80%が不動産関連の資産であり、不動産価格が下落すれば、住民のほとんどが資産を失ったと感じるようになり、消費が下落してしまうだろう」(ウォールストリート紙10月19日付)

すでに不動産関連の資金を絞ったことで恒大集団の経営危機が始まったわけだが、さらに、こうした愚にもつかない不動産税を導入した、経済は冷えついてしまう。反対する共産党幹部が多いのは当然で、適用範囲を縮小する案や、代替策として政府による低価格住宅の提供案が出てきているという。

しかし、これからの政策がこうした経済合理性にそって進行するかは保証の限りでない。それどころか、習近平は自分が押し付けようとしている政策や法律が、中国に大きな打撃となることを、分かっていてやっているのではないかとの説も根強い。これが政敵を駆逐するためにやっているという、「習近平による文化大革命」説が出てくる根拠なのだが、いずれにせよ、習近平がこれからも「権威主義的リーダー」であるかぎり、今回の不動産バブル崩壊はまちがいなく達成されそうである。

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