中国の不動産バブル崩壊!(4)全人代はついに不動産税を課す決定をした

習近平が進める「共同富裕」の政策が、いよいよ中国を崖っぷちに立たせているというしかない。10月23日、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、不動産税を一部の都市で導入することを決定した。これは日本の固定資産税にあたるもので、不動産のバブルを抑えるのが目的ということになっている。しかし、いまの不動産バブル崩壊の兆しの最中に新課税をするわけで、試験的な試みとはいえ危険極まりないものだ。

わたしはニュースを目にして、1990年に日本が不動産バブルのピークに、日本銀行が金融引き締めを行い、大蔵省(現・財務省)が資金の総量規制を行ったことを思い出した。前回もこの不動産税について簡単に触れたが、中国では土地は建前として国家のものなので、土地は国家から借りるという形をとっている。その使用権を与えた土地に新たに課税すれば、不動産価格を抑えるどころか景気全体を強力に押し下げる効果をもつだろう。

「政府当局は、これから数カ月の間に、この課税についての詳細を発表するものと思われる。そのなかには、どの地域がこの課税の対象になるのか、また、どれくらいの税率になるかが含まれることになると、政府に近い情報筋が語っている」(ウォール・ストリート紙10月23日付)

繰り返しになるが、この政策は習近平が進めている国民の平等化政策の一環ということになっているが、それがあまりに極端な方法が採用されていることから、「習近平の文化大革命」などと言われている。つまり、唱えている目標は目くらましで、実は、自分自身の権力確保・拡大が目的ではないかとの疑惑を生んでいるわけである。

しかし、たとえ習近平が共産主義の本筋に戻ろうと本気で思っていても、「間違ったバス停からは目的地に到着できない」。生じるのは、加熱した不動産投資だけでなく、いまの中国経済全体を落ち込ませてしまう危険性がある。たとえ試験的でも不動産価格が下落すれば、バブルの心理が崩壊して、それが全国に波及しかねない。そのため不動産税が提示されてからは、激しい抵抗が生まれ、一部の都市に試験的に課税するという方針に後退したのはそのためだ。

「まず手始めに30都市に試行されることになっていた原案は、さらに10都市にまで縮小されたといわれる。新しい法律では2025年まで全国において、資金が提供されないことになっているらしい」(同)

必ずしもそのまま同じことが起こるわけではないが、日本の金融引き締めはじわじわと間にそれまでの不動産バブル市場を冷え込ませ、総量規制は皮肉なことに「抜け穴」になった住宅専門金融会社(住専)に浮いた膨大な資金が流入し、結果的には壮大な不良債権の山脈を築きあげたものだった。

「統計によれば、いまの中国では90%以上の都市住民が自分の住宅を保有し、約10%の家計が最低3つの不動産を持っている。いっぽうで、不動産および不動産関連の産業が、中国のGDPの3分の1を産み出している」(同)

1989年ころ、私は雑誌編集者をやっていて、当時の有名評論家たちに話を聞く機会が多かった。ある評論家は「いまの時点で何か起こっても、日本はこれだけ貯め込んだんだから、しばらくは大丈夫だよ」と語り、また別の評論家に「不動産価格が下がるんじゃないですか」と尋ねると、「そんなことは起こらないよ。なぜなら国民の多くが不動産の所有者になっていて、価格低下を誰も望んではいないからね」と答えたものだった。

ウォール・ストリート紙によれば、もうすでに地方都市の当局は、たとえ自分たちの街が課税対象になっても「例外的扱い」となる方法がないか、検討に入っているという。

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