コロナ恐慌からの脱出(42)米国のGDP伸び率下落が意味するもの

アメリカの第3四半期の成長率が2%と、第2四半期の6.7%から大きく下落したことで、世界中にショックが走った。あれほど財政出動を行ったのに回復できないとなると、他の国はどうなるのか。しかも、バイデン大統領が打ち出していた3.5兆ドルの支出は、民主党内部の調整で1.7兆ドルまで縮小されてしまった。

アメリカ経済の回復が停滞していることについて、ひと目で分かるグラフを提示してくれているのは、英経済誌ジ・エコノミスト10月28日号の「アメリカのコロナからの経済回復が後退を余儀なくされている」である。短い記事だが、なかなか含蓄のあるデータ解説記事で概要を紹介して、多少コメントしたい。

まず、同記事の状況判断からだが、アメリカの経済回復はきわめて順調にいっていたように思われたが、図版の左図に見られるように、コロナ以前の趨勢から見ると、ここにきて停滞が生じている。これが常態での2%ならば気にする必要はないのだが、いまは少しでも早く本来のトレンドに戻りたい時期に、6.7%からの下落はやはり痛い。

では、この第3四半期での停滞は、何が原因で起こったのだろうか。同記事は3つ挙げている。第一が、デルタ株の蔓延によるコロナ感染の再拡大、第二が、サプライチェーンの回復遅延、第三が、財政支出による刺激政策の息切れである。

まず、第一の原因だが「アメリカの経済がパンデミックから抜け出してきたと思われたやさき、世界的な現象と同じく、デルタ株が急激に広がった。夏にはレストランが忙しくなり、キャンプ場が再開し、飛行機の予約も増えたのに、それが終わってしまった。そのため、調査で明らかになっているように、第3四半期において消費者コンフィデンスが下落した」。

第二のサプライチェーンも深刻だ。「切迫している供給網が生産に大きな被害を与えている。半導体からソファーまで、広範囲の生産が中間製品の品切れによって縮小している。世界中の工場、とくにアジアの工場では、パンデミックが広がるなかで、同域内の需要に応えようと格闘している状態である」。

第三の財政支出の問題は、もちろん大きい。「コロナ感染が拡大しているさなかに、政府が行った財政支出による全体への支援は、ここにきて干上がってしまった。個人への3回におよぶ補助金配布は3月に終わっており、家計はいまや貯金をつかい果たしつつある。そのいっぽうで、失業保険への特別措置は9月で終わってしまった」。

同記事によれば、なかでも一番大きかったのは、消費の落ち込みだという。それは上図の右図に明らかだが、第2四半期では消費がGDPを7.9%押し上げた。ところが、第3四半期ではわずか1%という低調ぶりだった。たとえば、自動車および自動車部品の場合、第2四半期に比べて第3四半期は売上が20%も落ちているのである。

この記事の中には書いていないが、この時期にバイデン政権はこれまで表明してきた「10年で3.5兆ドル」の財政拡大を「1.7兆ドル」にまで縮小してしまった。これはまだ民主党内部での調整段階でのことで、民主党といえば財政支出だというイメージを裏切って、あまりに巨大になった財政を疑問視する勢力は依然として存在しているのだ。次はフィナンシャル・タイムズ10月28日付の記事より。

「ジョー・バイデンは木曜日(10月28日)に、民主党のリーダーたちと経済政策について合意に達した。数週間の交渉をへて、バイデンの財政支出は10年で1.75兆ドルにまで縮小することになった。……バイデンはもともと10年で3.5兆ドルのパッケージを考えていたが、2兆ドル縮小した規模のものになった」

こうしてみると、アメリカの経済回復はほとんど希望を断たれたような気になる。しかし、前出のジ・エコノミストの記事は、「楽観主義への根拠も残っている」という。まず、そもそも2%という数値は年率換算をしたものなので、どうしても大げさに見えてしまうことを思い出していただきたいという。そのうえで、4つの楽観主義への根拠を並べている。

第1に、デルタ株の感染拡大はたしかに大きかったが、いまやなんとか感染者数が減っている。第2に資本財への発注が増えていることで、これは投資の増加を意味する。第3に、消費者コンフィデンスの数値が改善してきている。第4に、これは決定的だが、消費のバランスがモノからサービスに移ってきたので、原材料や中間財の供給不足が緩和されるという。

この記事の締めくくりの言葉は、「成長は停滞しているが、回復は続いている」というもので、2%にこだわっていては将来の成長を実現できないということだろう。とはいえ、停滞していることは間違いない。さて、そこで日本経済の場合はどうだろうか。あいかわらず、財政支出だけの議論が盛んだが、はたしてマクロ経済の視点だけで見た財政支出だけで、経済は動いているのだろうか。

アメリカの現実を見るかぎり、単なる財政拡大だけて経済が決定されているとは思えない。ましてや、「どマクロ」と呼ばれるような超巨視的な理論によって、実はすべてが決まっているとか、個々のファクターなど関係ないと思い込むのは馬鹿げた話だろう。

少し前までは、日銀がひたすら通貨を増やしさえすれば日本経済は立ち直ると言う人が多かったが、最近は財務省がひたすら財政出動を是認するだけでいいという議論がはなやかだ。しかも、同じ経済学者や経済評論家が、さも自分が最先端にいるといった顔をして、以前との矛盾にも関わらず声高に論じていることにも、人びとはそろそろ気が付くべきではないだろうか。

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