当サイトで映画・ビデオを担当している映画評論家・内海陽子の最近の投稿をご紹介します。これから公開される作品だけでなく、過去に上映された作品も多くありますが、見どころを鋭く論じる映画評です。これからの鑑賞のために、また、DVDで楽しむさいにもお役立てください。(サン・イースト企画)

最近の映画評から

老いてにぎやかな人生;田中裕子の『おらおらでひとりいぐも』 寂しさが忍び寄る孤独な老後。しかし、田中裕子が演じる主人公の老後は、なかなか華やかです。寂しさゆえに登場する「分身」たちがにぎやかにしてくれる。「老いるということは閉じることではない。生命のある限り、きっと人はやむを得ず進んでいく」。

挑戦をやめない家族;『ヒトラーに盗られたうさぎ』 ヒトラーが政権をとったことによって、ベルリンを逃れて亡命を繰り返す家族の物語。主人公の少女アンナは、つぎつぎと変わる環境のなかで、少しも臆することなく困難に立ち向かっていく。「そののびのびとした姿勢のひとつひとつが目に優しく飛び込んでくる」。

どことなく滑稽でどことなく怖い;『星の子』にみる芦田愛菜の包容力 少女からしだいに社会に目覚めていく年ごろの少女を描く。主人公のちひろの両親は、いっぷう変わった新興宗教団体に入っているために、普通の少女とは異なるさまざまな試練がやってくる。「不安や憂鬱を抱えるより希望をになうほうが辛いことがある」。それでもになうちひろを、芦田愛菜が見事に演じている。

刃の上を歩くような恋;『燃ゆる女の肖像』から匂い立つ輝き 18世紀の孤島で出会った、伯爵家の令嬢と女性画家の恋。はじめは激しく反発しあうが、ふたりのひたすらで激しい性格が互いを燃え上がらせることになる。「愛は禁じられてこそ完全燃焼するのである。誰からも祝福される輝かしい恋は、この恋に比べれば二流の恋である」。

幸運を呼ぶ赤パンツ;濱田岳と水川あさみの『喜劇 愛妻物語』 濱田が演じる「ダメ夫」と、水川が演じる「諦めない妻」との戦いの日々を描き出す。足立紳監督の自伝的小説をもとにした異色作。「がんばって、がんばって、がんばって、それでだめでもまたがんばる。そういう人間を信じる人間の粘り強さを、おおらかに見つめる喜劇である」。

内海陽子プロフィール

1950年、東京都台東区生まれ。都立白鷗高校卒業後、三菱石油、百貨店松屋で事務職に従事。休みの日はほぼすべて映画鑑賞に費やす年月を経て、映画雑誌「キネマ旬報」に声をかけられ、1977年、「ニッポン個性派時代」というインタビューページのライターのひとりとしてスタート。この連載は同誌の読者賞を受賞し、「シネマ個性派ランド」(共著)として刊行された。1978年ころから、映画評論家として仕事を始めて現在に至る。(著者の近著はこちら

内海陽子のほかのページもどうぞ

『愛がなんだ』:悲しみとおかしみを包み込む上質なコートのような仕上がり

『バースデー・ワンダーランド』:情感とスピード感に満ちた贅沢なひととき

『家族にサルーテ! イスキア島は大騒動』:けっして自分の生き方を諦めない大人たちを描きぬく

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『エリカ38』:浅田美代子が醸し出す途方に暮れた少女のおもかげ

『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』:本作が断然お薦め! 頑固一徹闘うジジイ

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熱い血を感じさせる「男の子」の西部劇

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僕の人生は喜劇だ!;ホアキン・フェニックスの可憐な熱演

カトリーヌ・ドヌーヴの物語を生む力

悲しみと愚かさと大胆さ;恋を発酵させるもうひとりのヒロイン

獲れたての魚のような映画;フィッシャーマンズ・ソング

肩肘張らない詐欺ゲーム;『嘘八百 京町ロワイヤル』

あったかく鼻の奥がつんとする;『星屑の町』の懐かしさ

高級もなかの深い味わい;『初恋』の三池崇史節に酔う

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成田凌から飛び出す得体のしれないもの;ヨコハマ映画祭・助演男優賞受賞に寄せて

関水渚のふてくされた顔がいい;キネマ旬報新人女優賞受賞

情熱あふれる歌・踊り・群舞;『ヲタクに恋は難しい』の高畑充希になり切る

受賞者の挨拶はスリリング;キネマ旬報ベスト・テン 続報!

年を取るってすばらしいこと;波瑠と成田凌の『弥生、三月』

洗練された泥臭さに乾杯!;『最高の花婿 アンコール』

生きていると否応なく生じる隙間;『街の上で』若葉竜也の「素朴」さに注目!

ヒロインを再現出させる魔術;ゼルウィガーの『ジュディ 虹の彼方に』

わたしはオオカミになった;『ペトルーニャに祝福を』

心が晴れ晴れとする作品;『五億円のじんせい』の気性のよさ

「境目」を超え続けた人;大杉漣さんの現場

老いた眼差しの向こう;『ぶあいそうな手紙』が開く夢

オフビートの笑いが楽しい;『デッド・ドント・ダイ』のビル・マーレイを見よ

現代によみがえる四人姉妹;『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

夜にたたずむ男の見果てぬ夢;『一度も撃ってません』の石橋蓮司に映画館で会おう

長澤まさみの艶姿を見よ!;『コンフィデンスマン JP プリンセス編』は快作中の快作

幸運を呼ぶ赤パンツ;濱田岳と水川あさみの『喜劇 愛妻物語』

刃の上を歩くような恋;『燃ゆる女の肖像』から匂い立つ輝き

どことなく滑稽でどことなく怖い;『星の子』にみる芦田愛菜の包容力

挑戦をやめない家族;『ヒトラーに盗られたうさぎ』でリフレッシュ


『女優の肖像』全2巻 ご覧ください