新型コロナの第8波に備える(5)スウェーデンの現状から日本を振り返る

ひところ頻繁にスウェーデンのコロナ状況が報道されていた。いまは逆にほとんど報道されなくなった。そのせいか、やっぱりスウェーデンのコロナ対策は成功していたという人が出てきた。感染者数が急激に減って、いまやほどんど感染者がいなくなったというのだ。しかし、では死者数はどうなのだろうか。感染者がいないのだから死者数がいるわけがないというのは、あまりにも単純なものの見方であることを、これから見ていこう。

スウェーデンのコロナ対策をバランスよく紹介するというのはかなりの困難がともなう。それは精緻をきわめていて複雑だからというより、当事者たちの発表の仕方にかなりのバイアスがあり、コロナ対策の力点が実はかなり動いていたからだ。ここではそうした面倒な話はしないで、なるだけ客観的なデータだけで見ていくことにする。

まず、冒頭に述べたように「スウェーデンはやっぱりすごい」がどこから出てきたかといえば、発表されている感染者数がゼロまでいかないにせよ、ずっと低い数値を続けていたためなのだ。ためしにオックスフォード大学のOur World in Dataでスウェーデンの感染者数の推移を示したグラフを見てみよう。ごらんのように、昨年にオミクロン株のものすごい感染爆発を抑えてからは、ほとんどゼロ近傍の数値で推移してきた。これだけを見れば、スウェーデン・ファンならずとも「すごい!」と思うだろう。

しかし、残念ながらスウェーデンだけがコロナ・ウイルスの攻撃、オミクロン株の猛威から免れていたわけではない。それはコロナによる死者数のグラフを見れば歴然としている。最初のころの激しい感染と死者数の急伸や、デルタ株での死者数のピークの後、オミクロン株のさいにはかなり死者数を抑えたとはいうものの、かなりの死者数を出している。そして、ここからが注目すべき点なのだが、それ以降も感染者数ほど低下したわけでなく、さらには寒冷期のいまを迎えてからは前回の感染者数を超えてしまっている。

え? そんなことがあり得るのか、と思う人がいても無理はない。しかし、これは客観的なデータであり、また、スウェーデンの名誉のために行っておけば、基準の多少の違いはあるかもしれないが、データを改竄したわけではない。この点、中国のコロナ関連データなどとは大きく違っている。考えられるのは、感染者の調査において基本的な条件に変更あるいは変化があったことだろう。そしてそれは、このPCR検査の頻度数のグラフを見れば歴然と示唆されている。この国は今年になってから、積極的な感染数調査を事実上やめたのである。

そこで改めて、アメリカの衛生学の中心とされる、ジョーンズ・ホプキンス大学のグラフを見てみよう。多少のずれはあるが、データ収集の方法や基準に違いがあっても、スウェーデンの感染者数と死者数の激しい落差感はご覧の通りである。死者数に関しては先ほどのOur World in Dataのものよりデータがアップデートされていて、死者数が持続的に急上昇中であることがさらに明確になっている。いまやデルタ株のさいの死者数にすら迫ろうとしているのである。

では、日本はどうなっているんだという人もいると思うので、死者数を比較してみよう。日本の人口はスウェーデンの12倍以上なので、もちろん、100万人当りのデータで比較のためのグラフを見ていただこう。当然のことだと思う人もいるだろうが、スウェーデン方式が誤解されて称賛されていた時期には、どういうわけか人口比による補正を施されていない数値を並べて、いかにもスウェーデンの感染者も死者も少ないように見せていた日本の全国紙がいくつもあったので、あえて述べておきたい。こういうことをした全国紙は、進歩系でも保守系でもあった。なお、比較のために英国のグラフも入れておいた。

この死者数の比較グラフを見るたび、私は残念でしかたがなくなる。というのも、このグラフでも分かるように、日本は英国との比較はもとより、スウェーデンと比べても、死者数がいまは約4分の1だが、5分の1、いや10分の1の時期があったのだ。もちろん、ここには「経済を回す」とかいうことで、感染者数や死者数を抑えるのを緩めたことと関係があるだろう。しかし、それよりも無念なのは、根拠の希薄な馬鹿げた奇説のために、当然あってよいような注意がおろそかになり、感染して生命まで失った人もいるだろう。そのことを考えると本当に悔しいというしかない。最後に、英国、スウェーデン、日本のワクチン接種の経緯を振り返っておこう。

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