新型コロナの第6波に備える(1)ドイツの感染者1日に5万人の理由

ドイツの新規感染者が1日で5万196人に達して、同国民だけでなくヨーロッパ諸国に衝撃を与えている。同国で5万人を超えるのは新型コロナのパンデミックが始まって初めてのことで、コロナ対策において「ヨーロッパの優等生」といわれたドイツが、なぜここまで手をこまねいていたのか、首をかしげる専門家もいる。

いくつかの原因がありそうだが、やはりワクチン接種率が関係していることは間違いない。同月11日現在で少なくとも1回接種を受けた割合は69.8%、2回は67.3%で、かなりの接種率といえる。しかし、これはあくまでドイツ全土での割合で、BBCニュース11月11日付によると7日間で最も感染率が高いザクセン州(459人/10万人)は、接種率が国内最低の57%にとどまっているという。

フランクフルター・アルゲマイネ紙の感染分布図11月11日現在(左図)を見ると、地域差が大きいだけでなく、それがバラバラではなく一定の偏りがみられる。前出BBCニュースによれば、たとえばザクセン州のライプチヒではワクチン反対運動が激しく、先週末には数千人の抗議運動が展開されたという。

反ワクチン運動の指導者レイフ・ハンセンは、ワクチンを製造した企業や承認した機関を信じることができないとして、次のように述べている。「これは差別だ。われわれの社会では受け入れられないと、切に切に訴えたい。彼ら(製造業者と当局)はワクチンは安全だという。では、それを信じて子供たちに接種させるのか。とんでもない! あんなものを体にいれてはいけない。私の体に入ってこないよう闘うつもりだ」。

そのいっぽうで、ライプチヒ市のコロナ医療は必死に対応している。最近、18人の患者が入院したが、そのうち14人がワクチンを接種していなかったとBBCは伝えている。ドイツでは12歳以上1600万人がワクチン接種を完了(2回接種)していない。しかし、接種拒否の人たちを説得するのは「政府は難しいと認識している」。

では、再びロックダウンに向かうのかといえば、これもかなりの抵抗があって難しいとみられている。あるライプチヒのバー経営者は「もう店を閉じる寸前。他人のことを考えて感染させないようにする合理的行動をとれない人のために、ひどい目にあっているのは、本当にくやしい」。ライプチヒにある病院のひとつでは「入院した患者の半分は死亡する」と医師たちは見ているという。

こうした状況は経済の回復についてもジレンマを加速している。CNBC電子版11月11日付によれば、ドイツの通貨金融安定研究所のヴォルカー・ヴィーランドはCNBCに次のように語っている。「ドイツではロックダウンに対してはためらいがある。ワクチン接種が行われルールが守られれば経済と産業を機能させることが可能になる。冬にかけての急激な感染増加を予想しなくてすむ」。

優等生から突然落第生への転落か? しかし、こうした事態は日本に無縁の事態ではない。今年8月から9月にかけての急激な感染の原因について公的には、デルタ株の蔓延が原因だとしか教えられていない。では、その後、急激に感染が低下したのは何かというと、ワクチン接種のが進展したからだという話だけである。デルタ株だけであれほど急増するものなのか、また、ワクチン接種だけであれほど急減するものなのか。こうした問いへの答えは、いまも実に曖昧なものばかりだ。つまり、国民は本当のところが分かって納得していないのである。

いよいよ、これから第6波への対策を本格化しなくてはならないというのに、何をどうすればよいか、しっかりとした対策がとれない。こうした状況のなか、元ヨーロッパの優等生ドイツの状況は、これからの日本にとってまたとない教訓および参考例になっているように思われる。

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