新型コロナの第3波に備える(5)ロンドンは再びロックダウンに突入!

ロンドンは今週末(10月17日)から再びロックダウンに入ることが決まった。社会生活や旅行に強い規制が敷かれることになり、経済活動の低迷による悪影響を懸念する多くの団体や識者が反発している。今回のロンドンのロックダウンはレベル2(Tier2)であり、パブやレストランを含む屋内で人と会うことが禁じられ、公的交通機関を使わないようにアドバイスされるという。

今回のロックダウンは全土に適応されたのではなく、地域ごとに感染拡大の程度によって、レベル1、レベル2、レベル3の3つに分類される「ローカル・ロックダウン」「リージョナル・ロックダウン」だと説明されている。その分類表を見る(右図)とかなり細かく規定されていて、ロンドンは「リスクが高い」のレベル2に指定されたわけである。

ロンドンが課せられるレベル2の規制がどれほどのものかを、英紙ザ・タイムズの記事によって簡単に説明すると次のようになる。

①6人以上は会わないという「6人ルール」が屋外にも適用され、これは個人の庭にも適用される。②人々は家族ではない人たちと屋内で会うことはできない。これは家庭や催し物会場にも適用される。③すべての会場や職場は業務を続けてよいが、ナイトクラブなどの法律で定められたものはその限りではない。④ほとんどの飲食店は夜10時から朝の5時まで閉店しなければならない。食べ物の持ち帰りは10時以降も可能。⑤結婚式および葬式は参列者の数の制限はあるが挙行が可能。⑥スポーツ場やエクササイズ教室は「6人ルール」が守られるかぎり許可される。

ロンドンはレベル2だが、たとえば、1日に1000人を超える感染者を出したリヴァプールなどでは「きわめてリスクが高い」のレベル3と分類され、さらに厳しい規制が課されることになる。ここでは、パブやバーは閉店され誰にも会うことはできなくなる。それにたいして、「そこそこリスクがある」のレベル1の場合にはずっと緩和されていて、パブやレストラン、催し物会場はこれまで開いていたところは開店していいが、夜の10時から朝の5時までは閉店しなくてはならない。ただし、ここでも「6人ルール」は守られることになる。

すでに繰り返し報道されているように、英国では北部でのコロナ禍が激しく、特にリヴァプール周辺での感染状況が悪化している。当然、規制も厳しくなるわけだが、それは同時に経済活動が著しく低下することを意味する。ザ・タイムズによれば「どのような被雇用者もレベル3では業務停止を言い渡されるが、そのため彼らは規制が続く限り67%の給料を失うことになる」という。

グレートブリテン島の全体図でみてみよう。英経済誌ジ・エコノミスト10月17日号が掲載している地図によれば、それぞれの地域のコロナ禍の状況を反映して、かなりの違いがあることがわかる。これを全国規模で一律に規制強化しないのは当然だが、さらに、第2波へのロックダウンの期間も、もっと状況に応じて短縮すべきだという声があるのは理解できる。

ジョンソン政権としては国民全体を対象として規制を考えたときには、強力にコロナ禍を封じ込める案を提示すれば支持率が上がるが(事実、今回のロックダウン断行表明は支持率を上げている)、いっぽうで財界や労働界からの批判は強まることになる。つまり問題は、ロックダウンの仕方そのものに立場を引き裂かれてしまうことで、さらに財界を背景としている保守党内部からの批判に加えて、雇用を維持したい労働党からの要求も強くなるのは苦しいわけだ。

「今回のコロナ危機を通じて、労働党首キア・スターマーは政府の戦略を支持してきた。ところが、今月13日になるとスターマーは姿勢を変えて、『サーキット・ブレイカー』つまり短期間のロックダウンを要求するようになった。ジョンソン首相はスターマーの機会主義を批判したが、ジョンソンには弱みがある。つまり、保守党内部のロックダウン批判が強まれば、スターマーの協力がなければやっていけなくなるのである」(同誌)

まあ、緊急事態の規制度合いは、どこの国でも同じような政治的構図になるが(野党が機能していない日本は別として)、ジ・エコノミスト誌は、「第1波のときにはジョンソン首相の政治的資源を大いに消費させたが、第2波はそれを枯渇させかねない」と論評している。

 

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