ウクライナ戦争と経済(24)米国のインフレをしっかり目で見ておこう

アメリカのインフレがついに9.1%に達した。世界の経済紙は「1981年11月以来の上昇率」などと報じているが、まずは基本となるデーターに基づくグラフを見て考えてみることにしたい。そして、日本はこれからどうなっていくのか。そのときどんな対策があるのかも、いまのうちに予測しておくべきだろう。

「消費者物価が6月にはさらに早いスピードで上昇して、年率にして9.1%に達した。これは40年ぶりのことで、FRBが今月に政策金利を最大限の率で上げる可能性を開いた」(フィナンシャルタイムズ紙7月14日付「米国インフレ9.1%に達し、FRBへのプレッシャーは上昇している」)

同紙によれば、水曜日(7月13日)に労働統計局から発表された数値は前月のペースをうわまわり、エコノミストたちが予想していた8.8%からさらに1.3%高いものとなった。コアCPI(食料品とエネルギーを除外した数値)は5.9%で、これは5月の6.0%よりは低いが、趨勢としては延長線上にあるとのことだ。

原因はそれほど難しいものではなくて、エネルギーとくにガソリンの上昇率が59.9%を記録している。さらにウクライナ戦争の影響で食品が上昇し、他の分野にもその影響が及んでいる。そこでバイデン大統領は、中東にでかけていって石油の増産を促しているわけだが、せっかく稼ぎが多くなっている産油国が、「次の大統領にはならないほうがいい」との割合が民主党内でも60%を超えている大統領のいうことを、そんなに簡単に聞くかは微妙なところだろう。

この呆れるばかりの上昇率にも、少しだけ希望が見えている分野がある。前年比較ではなく前月比較でみれば、上昇率が下がっている項目もあるし、航空運賃などはマイナスに転じている。しかし、全体でみれば上昇傾向であることは間違いないから、FRBは7月にFOCOMで金利をめいっぱい(つまり0.75%)上げるだろうとの予測が出てくるのは当然なのだ。注目しておきたいのは住宅価格で、一見、大した上昇に見えないが、これは統計上も措置で、住宅は賃貸料に置き換えて算入することになっているからだ。

たとえば、ウォールストリート紙7月13日号は一面の記事「米国のインフレは40年ぶりに9.1%に達する」のなかで、「住宅のインフレは重要である」と指摘している。「なぜなら、コアCPIの約40%を占めており、また、FRBが参照している個人消費価格インデックスの約17%を占めているからだ」。つまり、上昇率だけでなく家計支出の割合も見ろということだ。さらに、いまのところ、2008年のような住宅ローンに関する問題はないとする論者が多いが、この類は「気がつくと大問題だった」となる危険性がある。

とはいえ、このウォールストリート紙も前出フィナンシャルタイムズ紙も、心配しているのはFRBがやりすぎて景気を冷やすことで、後者はFRBが金利をあげていけば失業率が上昇し、いまの失業率3.6%は2024年までに4%までに達すると見ている。「エコノミストの中にはもっと厳しい5%を予測する者もいる」とのことである。日本の場合も、世界中がインフレと金利上昇のなかで、独自の道を歩むことは不可能だろう。しかし、いまのインフレがいつから急伸するのか、さまざまな条件を勘案しつつ、じゅうぶんに状況を読み取る必要がある。

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