仮想通貨の黄昏(20)ビットコインでAIバブル崩壊の時期を予想する

またまたビットコインが下落して、この仮想通貨あるいは暗号資産に対する評価をめぐって議論が沸き立っている。しかし、この仮想だか暗号だか不明の存在については、別の役割もあるという説が出てきた。英経済紙フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ケイティ・マーティンの「ほかの金融資産の暴落の警報」という役割である。いずれやってくるAIバブル崩壊の予兆として、役に立ちそうだというのである。

「期待と可能性に満ちた、弾むようなビットコインは、ここ1週間ほどで実に役に立つものだと分かった。ビットコイン支持者たちは、これはお金だ(違います!)、インフレヘッジとなる(冗談でしょ)、ストレス時の非難資産だ(笑止)などと、のたまってきたが、結局のところ、そのもっとも有用な機能は、市場の変調を早期に警告するシステムとして、機能することが分かったのである」

という風に書いているので、これはジョークを含んだ軽妙なエッセイだということがすぐにわかる。分からない人は、ビットコインを高値買いしてしまって、いまの下落は一時的だと繰り返し自分に言い聞かせている、不幸な若者だけだろう。ケイティは続ける。「ビットコインが下落すれば、株価もそれに追随する。そして、ビットコインは大幅に下落して、10月初旬から3分の1ほど落ち込んで8万4000ドル程度となっている。適性価格に達するまで、あと8万4000ドルのところまできたのである」

適性価格がゼロというのは正しいかどうかはともかく、ケイティがこの記事で訴えようとしているのは、実は、いまのバブルからの脱却の方法である。エヌヴィディアの決算が11月19日に発表されて、好決算だったことから株価はやや持ち直した。しかし、翌日にはビットコインが急落したので、株価もそれに追随してしまった。でも、悲しむことはない。「なぜなら、この巨大な暗号資産は「有用な指標へと転じたのである」。

ケイティの見るところ、多くの投資家たちを綿密に取材すれば、やはり、世界の株価はバブルに陥っている。そして何らかの反落が起こることは間違いない。ただし、「それは必ずしも暴落ではなく、調整局面、場合によっては複数回の調整局面が訪れることになりそうである。重要な問題は、このバブルから抜け出すべきか、そしていつ抜け出すべきか、ということなのだ」。大型株を手放すと今年のリターンを犠牲にする危険がある。手放すタイミングが早すぎればせっかくのリターンを捨てることになる。

もちろん、いまの下落について冷静を保って決断しようとしている人たちは少なくない。たとえば、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者であるマーク・へ―フルは、AI関連取引について多くの「栄光と希望」が存在していることを認めつつも、今後も続くかは「100%確信」してはいないと述べている。にもかかわらず、へ―フルは楽観的な見方を放棄することなく、分散投資という常識的な投資法が破綻するまでには数ヶ月あるいは数年かかるとコメントしているのである。

また、パリに拠点を置く資産運用会社アムンディでも、同様の傾向が見られる。最高投資責任者のヴァンサン・モルティは、今週、AI技術とインフラへの過剰な支出が一部でみられることを懸念していると表明するいっぽうで、市場はいま転換点にあることは確かだが、近いうちに再び上昇する可能性もあると述べてもいるのである。

そして、へ―フルはおきまりのセリフで「バブルが崩壊して初めて、それがバブルだったと分かる」というのである。しかし、この決まり文句のⓒであるグリーンスパンは、自分はバブルを見破ったと誇ったこともあれば、明らかなバブルの最中に「フロス(小泡)」という言葉でごまかしたこともある。さらにはFRB議長を引退後の著作で「バブルは予想することか可能」とすら述べているのである。

さて、時間も残り少ないから、ケイティのエッセイの最後の部分を引用して終わりの考察に向かうことにしよう。「今年末、あるいは2026年のどこかの時点で、市場が全面暴落する可能性は依然として低い。いっぽうで、反落や調整の可能性は高い。市場のムードを測る指標としてビットコイン価格を注意深く監視することは、この非常に困難な時期を乗り切るのに役立つかもしれない」。

しかし、ケイティもまだ若いというべきだろう。あらゆる自称「賢い投資家」たちが、独自に開発した「株式市場のカナリア」を用いて、株式市場が放つ毒ガスから逃れようとしてきた。これを守れば、ほぼ最悪の事態からは逃れられると信じるだけでなく、うまくいけば売り抜けられると甘い夢を見てきたのだ。しかし、ケイティよりずっと昔の英国のエッセイストであるチェスタートンは言った。「世界は合理的であるように見えるが、非合理は突然姿をあらわす。野性は常に隠れている」。

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