仮想通貨の黄昏(4)ビットコイン21%急落の犯人は誰だ?

先週の週末12月5日、ビットコインの価格が20%以上も下落して、仮想通貨(暗号資産)の投資家たちを動揺させた。これも新型コロナのオミクロン株の影響だ、いや、FRBのパウエル議長が金融緩和政策をやめるからだと、かまびすしい議論が起こっているが、他にも原因は考えられるようだ。

ウォールストリート紙12月5日夕刻(日本時間)配信の「株価の下落後、ビットコイン価格が乱高下」を参考に少しばかり考えてみよう。まず、オミクロン株の感染拡大がビットコインおよび仮想通貨を下落させるという説については、先行したハイテク株の下落と同様、先進諸国がつぎつぎと入国制限を実施したことが大きいとされる。つまり、せっかくビジネスマンたちの旅行ができるようになったのに、ふたたび世界は規制だらけになり、経済低迷に逆戻りだというわけである。

また、米中央銀行FRBのパウエル議長が緩和策中止を早めるというニュースが、経済低迷をもたらすのではないかとの恐怖を生んだせいだという説も有力だ。とくにビットコインについては、2017年から2018年にかけてのビットコイン価格低迷は、FRBの政策金利引き上げから始まっていたことは、ビットコイン投資家たちにとってトラウマのようになっている。

ざっと、今回のビットコイン乱高下の様子を再現しておくと、日曜日(12月5日)には49200ドルくらいで推移して、金曜日(12月3日)と比べて8%安、12月1日から見ても14%くらいで済んでいた。ところが、米国東部時間の深夜に急激に20%以上下落して、42000ドルまで落ちた。イーサなどは乱高下したあと元のレベルを取り戻したが、他のソラナ、ドッジコイン、シバイヌなどは大きく下落した。

もちろん、こうした急落にはオミクロン株やFRB金融引き締め以外にも、別の要素があるとウォールストリート紙は指摘している。たとえば、仮想通貨調査会社のジェネシス・グローバル・トレーディングのノエル・アチソンは、高くなったビットコインからマージン稼ぎをしたくなった投資家や、他の投資のための資金調達をしようとした投資家がいたという。

しかもアチソンは、仮想通貨デリバティブが発達して、将来の仮想通貨の上下を見込んだ取引が増えており、この場合にはかなりの資金量が必要なので、取引額が過剰に大きくなったと指摘している。仮想通貨にデリバティブを絡めるなどというのは、仮想に仮想を積み重ねているようなものだが、それがいまの仮想通貨市場の現実だということである。

もうひとつ、今回注目されたのは自国通貨としてビットコインを採用したエルサルバドルの動向だが、同国の大統領ナイブ・ブケレ(左の写真の帽子をかぶったおっさん。エルサルバドル国民も大胆な人たちだなあ)はツイッターで「エルサルバドルは底値買いをした!」と誇らしげに述べた。ところが、それからさらに下落したので、「さらなる底値の7分間を逃してしまった」と追加でツイッターしている。

繰り返し述べているが、いま仮想通貨(暗号資産)を保有しているのは、最初あるいは初期に大量を保有して資産を増やした余裕の人間たち、仮想通貨が将来は公式通貨になると信じ込んでいる狂信者、金融市場全体を見ながらポートフォリオを組んでいる冷静な投資家などからなっていて、資金が少なくひと儲けしたいと参加して結局は大損する若者がそこに加わっているという構図である。まともな投資家なら、資金運用に役立てるだけ役立てようと判断していても、過剰な期待はしていないだろう。

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