仮想通貨の黄昏(9)ビットコインの価値70%が消えた!
6月18日、仮想通貨ビットコインの価値がピークより70%あまりも下落し、仮想通貨全体でもピークの総額3兆2000億ドルから1兆ドルまでの下落を見せた。ビットコインは一時17600ドル近くまで落ちた。あまりにも当然のことだが、損をするのは高くなってから購入した素人であって、ゴミ同然の価格で手にいれていた「創業者」たちではない。
フィナンシャルタイムズ紙6月19日付は「ビットコイン20000ドルの閾値以下に落下」との記事を掲載して、6月18日にはビットコイン市場が18000ドル以下に暴落したことを伝えている。この日だけで約14%下落したことになり、2017年に仮想通貨が何回目かのピークを迎えたときのレベルを下回ったという。
もちろん、20000ドルが「閾値」だとか、また、2017年のピークを超えて下落することは「理論的にない」などといっていたのは、煽るだけの仮想通貨市場関係者たちが勝手に吹いていただけのことで、仮想通貨はその市場で交わされる情報以外には何の根拠をもっていない仮想的なものにすぎない。閾値だの前回のピークとか言いたがるのは、気まぐれな心理以外には何もない仮想世界ゆえの煽り文句なのである。
今回、耳目を集めたのは、仮想通貨貸企業が破綻したり、破綻寸前まで行ったことだ。たとえば、一般の人にも人気があったセルシウス社は、持っている仮想通貨を預けるとそれに「金利」がつくというビジネスで急成長を遂げていた。その金利の支払いも、同社が発行している仮想通貨セルでの支払いを受けると、なんと18.6%の利回りを約束していた。
「セルシウスは12日の夜に、市場の異常を理由に、仮想通貨預金者が口座から引き出したり移動させることを停止すると発表し、118億ドルの顧客資産を凍結した。創業者でCEOのアレックス・マシンスキーは15日、今必死で取り組んでいるとツイッターしている」(ウォールストリート紙6月16日付)。
一般の個人投資家たちはセルシウスに仮想通貨を預けるときに、まるでこの仮想通貨貸企業が銀行と同じだと思っていたらしい。しかし、この種の企業には銀行法やその他の法律による規制も保証も存在していない。このままセルシウスが破綻しても、預けた資産はもどってこないことになるだろう。
事実、セルシウスや同業のバベルファイナンシャルが預けた仮想通貨の引き出しを停止したのは、これまた同業のスリーアローズが引き出しを認めていたために、あっという間に破綻したからだった(前出フィナンシャルタイムズ紙)。しかし、よっぽど仮想通貨の市場が回復し、その背景となる金融市場の金利がふたたびゼロになりでもしなければ、この種のビジネスは成り立たない。
繰り返し述べてきたことだが、ちゃんとした金融機関が仮想通貨を顧客の投資対象に加えたのは、たんに運用資金量を大きくしたいからで、仮想通貨が素晴らしいと思ったからではない。彼らは仮想通貨を購入する人びとを3つに分類していた。第一が、仮想通貨が本当に将来は法定通貨になると信じている狂信者。第二が、短期的な投機対象として利ザヤを稼ぎたい連中。第三が、市場が安定していることを前提として、そのなかで仮想通貨もポートフォリオに加えている金持ちたち。しかし、いまやこの3種の購入者が干上がっている。
特に仮想通貨の「先祖」であるビットコインは、その実態は不明で誰が始めたのかも明らかにされていない。ただ分かっているのは、ほんの一握りの人たちが全体の8割とか9割をもっていて、あとから高額になったビットコインを購入する一般の素人投資家には、大きく儲けるチャンスなど、ほとんどないといってよいことである。
今回のビットコイン市場の「崩壊」は、基本的には世界中で中央銀行が金利を上げていること、ウクライナ戦争などで世界の政情が不安になり、とてもではないがゲーム的な仮想通貨売買が、安定して続けられる状況ではないことが原因といってよい。これからは多少の上昇はあっても、60000ドルを超えるようなビッグ・ウェーブは当面来ないと見たほうがよい。
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