ポスト・コロナ経済の真実(7)パンデミックは政治家たちの試金石でもあった

コロナの分類が5類に変更されたので、観光地の人たちはお客が増えると期待しているらしい。しかし、3月にマスクが自由になっても経済は落ち込んでいる。日本人はマスクを外せば、経済が復活するようなことをいっていた政治家たちがいた。「マスクは現代のちょん髷」などといっていたタレントもいた。なんの因果関係もないものを、シンボルに仕立てあげて、感染者と死者という犠牲を払い免疫が強化された外国と、緩慢な免疫形成を目指した日本とを単純に比べていただけなのだ。

英経済紙フィナンシャル・タイムズ5月9日の速報は「日本の3月の家計消費は前年比同時期より1.9%の下落」だった。エコノミストたちの予想では1%上昇するはずだったので、かなりショックを与えているということだ。別の経済データでは実質賃金が2.9%下落したとのことだから、当然かもしれない。これはもちろん、食品とエネルギーの価格が上昇しているためだが、まだまだ日本経済は本調子ではないとの日銀の見解は正しかったのだ。

「賃金上昇の弱さは日銀総裁植田和男の見解を支持するものといえる。日銀の超緩和策の維持は日本の賃金上昇の沈滞を刺激するための格闘と見ることができるだろう」

政治家たちが専門家という存在を信用しないというのは分からないでもない。しかし、専門家のいうことを理解する努力も準備もないのに、最初から軽視して自分たちの政治的な都合ででたらめな主張をしていれば、「ああ、やっぱりこの人たちは何も考えていなかったのだ」と気が付く選挙民も少なくはない。単なるおためごかしを口にする経営コンサルタントか、罵声で切り抜けられると思っている突っ張りにすぎなかったと、正しい認識にいたる人たちもけっこういるはずである。

政治の言葉というのは、確かに経済学や免疫学とは大きくことなっているし、ある意味で正確さを欠くかもしれない。しかし、その幅というのは不確実な現実の世界を表現するためのものであって、そのときどきのペテンもどきの政策を正当化するためのものではない。そうした粗暴な発言を続けていれば、やっぱりこの人たちはけっきょくのところ、派閥のボスにはなれても、日本のリーダーの器ではないと、見抜かれてしまうのである。ちなみに、英経済誌ジ・エコノミストの国別経済成長率を見ると、いまのところ日本は、他の先進国と比べればそれほど悪い方ではない。

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