ポスト・コロナ経済の真実(6)中国GDP4.5%上昇に潜む落とし穴

中国の第1四半期のGDP伸び率が4.5%だというので、ゼロコロナ経済からの復活だと騒ぐメディアもあるが、年率5%に達していないと報じるマスコミもある。しかし、問題はその内実である。ともかく、まずはデータを見てみよう。リバウンドした分野もあれば低迷を続ける業界もある。復活しそうで、実は、復活していない部分もある。

昨年の暮れに中国は「ゼロコロナ」政策を放棄して、推計では100万人といわれるコロナ死の犠牲をはらって経済復活路線を断行した。その結果、3カ月で年率換算4.5%のGDP伸びが見られたということである。この100万人は150万人という説もあるが、ともかくそれに見合う結果を出したのかが、本当はまず問われるべきなのに、経済マスコミにおいては、それがまったく問題視されていない。

また、すでに冒頭で述べたように、分野によってまちまちの結果が出ているが、これも本来は細かに見ておく必要があるだろう。中国政府お得意の、大胆なインフラ投資や製造業叱咤政策による辻褄合わせかもしれないのだ。こうした疑問に材料を提供してくれているのが、今回も英経済誌ジ・エコノミストで4月18日付の「中国の新GDPは同国経済への信頼性を回復するかもしれない」のグラフを見ておこう。今回は中国政府のデータそのものへの疑問は、とりあえず措くことにする。

中国は4月18日にGDP伸び率は4.5%を達成したと発表したが、これはもちろん悲惨だった昨年の同時期との比較であり、しかも、中国政府が今年度の目標とした年率5%に達していない。ジ・エコノミスト誌は、それは認めつつも、この成長の内実に踏み込んでいるが、まず、この成長が最近に偏っていることは、好ましい傾向だと見ている。つまり、12カ月まんべんなく同じペースではなく、ゼロコロナをやめてからの3カ月だけで見れば9%もの成長を遂げているというわけだ。

さらに、分野別に見ていっても、悪くない結果を出しているといいたいようだ。小売部門は、インフレ率の補正を盛り込んではいないものの、3月だけで昨年と比較すれば2桁成長を遂げている。ケータリング(出前や仕出だがこれは中国では大きい)などは、コロナ禍ではひどい打撃を受けたが、26%もの伸びを示している。

しかし、そのいっぽうで輸出は期待以上の成績とはいえ、いまのところ爆発的とはいえない。不動産部門も大都市では復活の兆しがあるが、住宅市場はまだまだ弱いと言わざるを得ないどころか、地方ではいまや低迷が宿痾となってしまうのではないかとの、暗い予測すらあるといわれる。こうした分野別の検討をへたうえで、同誌の暫定的結論は次のようになっている。

「中国は克服するべき深い経済的問題を抱えてきたことは確かだ。ことに若い層での失業率が上昇していることや、地方政府における負債が積み上がっていることは問題だろう。とはいえ、こうした励みになるデータを見れば、有難いことに、今年の経済回復への疑問は、むしろこうした景気好調が景気後退に転じないで欲しい、という気持ちにさせてくれるのである」

ジ・エコノミストのような、経済マスコミには珍しい「皮肉屋」でも、ここまで楽観的になれるのかと呆れるが、あまり評価されていない輸出が、これから伸びる可能性は、ウクライナ情勢しだいとの側面がある。そしてまた逆に、地方経済と地方政府の暗い見通しは、秋口に再びコロナ禍によって、さらに悪化してしまうのではないかとの観点は、いまのところまったくないのは、ちょっと不自然ではないかと思わざるを得ないのである。(上の写真:マクロンが訪中したさい、習近平以外はすべてマスクをしていたのが気味悪かった)

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