『女優の肖像』の編集をお手伝いして
サンイースト企画代表
今回、内海さんの『女優の肖像』全2巻の編集を担当して、いちばん強く感じたことは、内海さんが、どれほど映画が好きか、そして、女優さんたちに強い一体感をもって、ともに人生を生きてきたのだ、ということでした。
お読みになったかたはすぐに気が付くことですが、内海さんは好きな女優さんにほとんど手放しで言葉の「おっかけ」をしているようなときでも、どこかで醒めた目で突き放して「そのひとこと」といえるような、キツイことばを浴びせることがあるのですね。しかも、それがその女優さんの本質を鋭くえぐってしまうわけです。
それとはまったく逆に、なんとなく褒めているような書き方をしているのだけれど、よく読んでみると、本当はあんまり評価していないこともあります。社会でも厳しいリーダーが見込みのない者にはやさしく接し、本当に厳しくするのは、実は、高く評価して期待しているからだというのと、ちょっと似ているかなと思いました。
今回の仕事では、キンドル版ということだったので、たとえばリンクをたくさんはって、データ検索をしながら読んでもらうことも考えました。ところが、作業の途中でスマホやタブレットで実験してみると、別にリンクをはらなくとも、女優さんや映画の名前をなぞるだけで検索が可能になっているので、よけいなことをしないほうがよいと判断しました。
出版の仕事に携わっていても、テクノロジーの進展は早いので、すこしでも楽しく読んでいただくという思いから、何ができるかあれこれ考えるのですが、電子出版での技術革新はもう古い編集者の発想を超えてしまっているのかもしれません。
とはいえ、いちばん読んでいただきたいのは、検索でさがしたデータではなくて内海さんの「そのひとこと」です。わたしは箴言やアフォリズムが好きで、本棚に何冊かおいていてしばしば読むのですが、内海さんの『女優の肖像』は独特の箴言やアフォリズムに満ちています。それらを味わいながら読むのも、この2冊の本のひとつの読み方だと思いました。(本棚の新刊紹介をごらんください)